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【介護士になったきっかけ】彼の遺した想いと私の決意:介護の道を歩みはじめた私の物語【最終章第5話】

介護士になったきっかけ

幸せでした:介護士になれたのはあなたのお陰です

介護の道を選んだきっかけ【私の物語:最終章/第5話】をここに綴ります

イラストレーター「なのなのな」さんの

コミカルな作品を使わせていただくことで

心が少し軽くなり

救われた気持ちです。

いつ死んだってかまわない

平和な日常を

取り戻したかのように

見えましたが

彼は、相変わらずの

「いつ死んでもかまわねえ」

精神でした。

治療のための薬も

ビールで流し込む始末・・・

言ったところで

素直に聞くような人では

ありませんでした。

身体が疲れやすく

仕事も休みがちで・・・

眠前薬の量も

睡眠薬の強さも

次第に増していきます。

大好きなビールも

惰性で飲んでいるように

みえました。

情けなさいらだち

こらえているようでした。

あんな飲み方して

美味しいはずがない

美味しい訳ないよ・・・

私は何も言えず

ただ見守るしか

できませんでした。

私よりも、彼の方が

もっと

もっと

つらいのだから・・・

定期健診の結果は?隠さないでおしえてよ!

image

定期健診の日、

いつものように

待合で待っていました。

小さく微笑んで

黙って歩きだす彼。

私:

ねぇ結果はどうだったの?

彼:

いつもと一緒

変わらねえよ

さぁ

飯でも食って帰るか!

今日はラーメンだぞ

病院の玄関を出て

いつもと違う方に向かって

歩き始めました。

どこに行くんだろう

急に立ち止まり

振り返って

こう言ったのです。

彼:

あっちに、

いつか住むんだぜ

私:

え?

なに言ってるの?

ここは別棟の

緩和病棟です。

病棟脇の散歩道を

黙ってゆっくり歩く、

彼の後ろ姿が

とても小さく見えました。

きっと

また再発したんだ!

この人

絶対に嘘ついてる!

私に隠してる・・・

静かに黙々と

ラーメンをすする彼。

食事中、病気の事は

いっさい聞けません。

話してくれるまで

待つしかない

はやる気持ちをグッとこらえ、

タイミングを待とうと

必死でした。

自宅に戻り、彼は再び

ビールを飲みはじめ

重い口が開きました。

彼:

また出来たってよ!

くそっ!!

でも

もう手術はしねぇから

私:

なんで?

また病院つき添うよ

仕事は大丈夫だから

彼:

だめだ!

つき添いはいらねぇ

もう手術は

懲り懲りなんだよ!

いつも穏やかな彼が

この時ばかりは語気が荒く

とても恐ろしい顔に見えました。

私はそれ以上

何も言えず

長い沈黙が続きました。

突然のさよなら:本心がわからない

彼のアパートを出る帰り際、

いつものハグも

ありません。

それどころか

彼:

今度、お前の荷物

取りにきてくれ

いいな!

え?なんで?

「さよなら」ってこと?

もうお別れなの・・・

今はなにを言っても

むりよ・・・ね

黙って

彼の部屋を出ました。

時間が解決してくれる!

しばらくの間は

そっとしておこう・・・

帰り道・・・

涙が止まらず

路肩に車を止め

夕日を眺めました。

熱海の夕日が、

ますます悲しみを

誘いました。

それから2週間後、

彼の娘さんから

連絡がありました。

スマホ

父がまた入院しました。

手術は無事に終わりましたから

どうか心配なさらないように。

やっぱり再発したんだ!

居ても立ってもいられず、

病院に向かいました。

あれ?いない

どこ行ったの・・・

背後から

彼の声が聞こえました。

彼:

どうして分かった?

なんで来た?

・・・

仕事はいいのか?

・・・

あいつ

余計な事しやがって!

会話も弾まない・・・

「お大事に」

気持ちだけを伝えるのに

精一杯でした。

彼:

俺が入院してる間に

荷物を取りに来てくれよ

合鍵も!

な!頼むから・・・

やっぱりお別れなんだね

この時は涙も出ず、

どの道を走って

家に帰ったのか

覚えていません。

彼のほんとうの気持ちは・・・

それから数日後、

彼の娘さんから

また連絡がきました。

スマホ

父はね「彼女が出来た!」ってすごく嬉しそうに

あなたの事、いつも話していたんですよ。

あの人普通の人じゃあありませんからね。

つき合ってくれる女の人なんて、いないと思っていたから・・・

あんな父だけどあなたの事はとても心配していました。
ごめんなさいね・・・

今までありがとうございました。

自分のせいで

 私が職を失ったこと

旅行の夢も

 果たせなかったこと

俺と付き合っていても

 ろくな事がない

こんな事を

娘さんに話していたそうです・・・

私は

ただただ好きでした。

病気を含めて

彼の優しいところも

破天荒な性格も

全部好きでした。

最後の電話でした。

好きな女には俺のかっこ悪いところ見せたくないんだよ

・・・ごめん

彼の最後の言葉でした。

これは彼の本音

だったのでしょうか。

まさか・・・

こんな形でのお別れは

想像もしませんでした。

私が彼をおい込んだ

この言葉を聞いた時

彼に申し訳ない気持ちで

いっぱいになりました。

私が無理に

手術を勧めたから。

仕事を辞めてまで

つき添ったから。

全てが自分のエゴ

彼に精神的な負担

かけてしまったと・・・

初めて気がつきました。

こうして、

私の恋は終わりました。

その後

彼の板前仲間から

連絡をもらったんです。

彼のお墓はご実家の岩手にあるそうですよ

寂しいですね、男気のあるいい奴でした・・・

私は、

彼の最後の姿を

見てはいません。

今でも

遠い空のどこかで

包丁を握っている。

そんな気がして

なりません。

あとがき

彼と出会いや病気がきっかけで

目標となった

素敵な介護士さんと出会い

介護士になりました。

今の生活があるのは

この出会いがあったからこそと

感謝しています。

この物語をブログに綴ったことで、

少しだけ気持ちの整理が

できたような気がしています。

ありがとうね

masaさん。

私、少しだけ強くなったわよ。

第1話から第5話まで

お付き合いいただき、

本当にありがとうございます。

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