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野菜箱の中の梅の枝と、備前の花瓶

ばぁばちゃんの人生アルバム
時々利用している、らでぃっしゅぼーや の野菜箱。

今週も、いつものように箱を開けました。

青々とした葉物野菜に、土のついた根菜。

台所で献立を考えながら手を伸ばした、その時です。

箱の中に、一本の細長い枝がありました。

野菜の中に、すっと置かれていた一本の枝。

——梅の枝

野菜でもなく、花でもない。

けれど、確かに「季節」そのものが、そっと入っていました。

「梅の枝のお届けです」

野菜箱に入っていた一枚の紙。これだけで、もう嬉しかった。

同封されていた一枚の紙には、
産地の方の言葉で、こう書かれていました。

剪定の時期のこと。

花が咲くまでの流れ。

そして、
「まずは、枝そのものの風情を楽しんでください」

その一文を読んだとき、
胸の奥が、すっと静かになりました。

これは、おまけではない。

誰かの手から、ちゃんと渡されたものだ——
そう感じたのです。

迷わず選んだ、備前焼の花瓶

私は、その梅の枝を、
迷わず、備前焼の花瓶に挿しました。

この花瓶は、
私が四十代の頃、とても大好きだった人から
贈られたものです。

彼は、岡山県備前市の出身でした。

備前の人、備前の仕事

彼は、もともと重機を扱う仕事をしていました。

和歌山の串本町で、
崖の整備作業中に、誤って重機ごと転落。

下半身を損傷し、
医師からは
「もう二度と歩けない身体だ」と告げられたそうです。

それでも、
懸命なリハビリの末、歩けるようになりました。

出会った頃の彼からは、
そんな壮絶な過去は、少しも感じられませんでした。

事故の後、
彼は古民家の解体作業の仕事をしていました。

その現場で、
土埃の中から出てきたのが、
この備前焼の花瓶だったのです。

少しずつ分かってきたこと

お付き合いするうちに、
いろんなことが、少しずつ分かってきました。

熱い、冷たいが感じにくいこと。

字がうまく書けないこと。

お箸が使えず、
スプーンやフォークで食事をすること。

それでも彼は、
いつも屈託のない笑顔でした。

岩のように、どんと構えた立ち居振る舞い。

その姿に、私は惹かれていったのです。

救われた言葉

彼は、私の子どもたちを見て、
「素直でええ子じゃ」と言ってくれました。

そして、こう続けたのです。

「お前が女手一つで、一生懸命育ててきたことが分かるよ」

その言葉に、
私はどれほど救われたことでしょう。

この人のそばに、一生いたい。
心から、そう思いました。

けれど、彼は距離を置いた

一緒に眠った、ある夜。

布団の中で、彼は尿失禁をしてしまいました。

事故の後遺症と、
尿を出しやすくする薬の影響でした。

私は、何とも思いませんでした。

病気も、身体のことも、
彼の一部だと思っていました。

けれど彼は、
「自分の好きな女に、格好悪いところは見せたくない」
そう言って、少しずつ距離を置くようになったのです。

備前焼に残った時間

お付き合いは、三年ほど続きました。

その終わりに、
彼が私に残してくれたのが、
この備前焼の花瓶でした。

備前の土で生まれ、
古民家の床下で眠り、
彼の手を経て、
私のところへ来た花瓶。

多くを語らない彼らしい、贈りものです。

梅の枝が、そこに立っている

備前焼の花瓶に、梅の枝。

その花瓶に、今、
一本の梅の枝が立っています。

一輪挿しとも言えず、
華やかでもない。

ただ、硬い枝が、
まっすぐ、静かに。

枝先には、
小さな蕾のようなものが見えます。

咲くかどうかは、分かりません。

でも、
この枝を眺めるたび、
備前の土と、彼の人生と、
私の時間が、重なって見えるのです。

今日の縁側便り

備前の花瓶に、梅の枝。

考えてみれば、不思議な縁です。

人も、物も、
思いがけない形で、
また出会うことがある。

縁側でお茶を飲みながら、
そんなことを思っています。

咲いても、咲かなくても。
この枝は、
もう十分に語ってくれています。

読んでくださって、
ありがとうございます。

縁側のあとで、少しだけ

※ここからは、
ばぁばちゃんが今、大切にしている場所のお話です。

以前、心にモヤモヤを抱えていた頃に、

空飛ぶ引きこもり小説家、千聖さんの隠れ家カフェと出会いました。

ばぁばちゃん自身が、心から大切にしている場所です。

何度かメールでやり取りをする中で、

千聖さんのあたたかい言葉に、どれだけ救われたことか…。

この出会いに大きな勇気をもらい、リアルでもお会いすることができ、大切な思い出が一つ一つ増えています。

今は「好きなことを仕事にする生き方」を未来型*夢の降る道で学んでいます。

まるで大人のための寺子屋みたいな場所。

ここで「山ごもり竹川」という仙人みたいな方や、
私の心をやさしくほぐしてくれた千聖さんに出会うことができました。

よかったら、あなたもこっそり覗いてみてくださいね。

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