工房の記憶
ミシンを踏む音を聞いていると、
ふと、昔のことを思い出します。
子育てをしていた頃、私は内職でカントリー雑貨を作っていました。
アンファンというブランドの仕事で、
パイン材の小物にステンシルをしたり、ぬいぐるみや布小物を縫ったりしていました。
特にぬいぐるみに関しては、
「ぬいぐるみは誰にでも任せられないんだよ。目が一番大事なんです」
そう言ってもらえたことを、今でも覚えています。
工房には、材料を届けてくれる背の高い男性がいて、
デニムにチェックのシャツがよく似合う人でした。
もう一人、裁断をしている女性がいて、
白髪まじりの髪を三つ編みにして、エプロン姿で静かに手を動かしていました。
くすんだピンク色のワンピースがよく似合っていて、
どこか物語の中の人のように見えていました。
その場所には、派手さはないけれど、
やさしくて落ち着いた空気が流れていました。
自分の手の中にあったもの
私はその空気を感じながら、
家でミシンを踏んで、ひとつひとつ手を動かしていました。
出来上がったものは、お店に並びます。
休みの日になると、そっとお店をのぞきに行って、
並んでいる雑貨の中に、自分が作ったものを見つけると、
「これ、私が作ったものだ」
心の中で、そうつぶやいていました。
誰かに気づかれるわけでもないけれど、
それでも少しだけ嬉しくて、
胸の奥があたたかくなるような気持ちでした。

離れていた時間と、戻ってきた感覚
それから長い時間が過ぎて、
子育てや仕事に追われるうちに、
いつのまにか、作ることから離れていました。
でも、好きだった気持ちは、消えていなかったようです。
今、こうしてまた手を動かしていると、
あの頃の空気や、手の感覚が、ふっとよみがえってきます。
小さな布を縫って、
小さな洗濯物を作って、
ガーランドにして並べる。
あの頃と同じようでいて、
少しだけ違うのは、
今は、自分の好きなものを、好きなように作っているということです。
今につながっているもの
あの工房で過ごした時間も、
出会った人たちのことも、
そっとお店をのぞいていた日のことも、
どれも、今につながっているような気がします。
また、ひとつ作ろうと思います。
今日の縁側便り

昔のことを思い出しながら、
あの頃の自分と、今の自分が
どこかでつながっているような気がしました。
忙しい毎日の中で、
好きだったことを忘れてしまうこともあるけれど、
ふとしたきっかけで、
また手の中に戻ってくることもあるのですね。
明日はお休み。
蝶柄のパンツを作ろうと思います。
あの蝶の布が、ようやくかたちになりそうです。
ミシンを踏む音も、
きっと、あの頃と少し似ているのでしょうね。
読んでくださって、
ありがとうございます。

