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息子の涙と娘の恋──母として、見守るしかなかったあの日の選択

家族の記憶、セピア色の公園 ばぁばちゃんの人生アルバム

少しずつ落ち着きを取り戻した新しい暮らし

子どもたちの人生にもまた、新たな波が押し寄せていました。

ある日突然知らされる、息子の彼女の妊娠。

そして、娘の心をそっと照らす、運命の出会い──。

親として、女として、私が立ち止まるその先に、

またひとつ「選ばなければならないこと」が現れます。

前回の記事はこちらからお読みいただけます。

息子の選択

夕暮れの2人のシルエット

息子には、小学生の頃から仲の良かった幼馴染の彼女がいました。

おませで目立つ女の子。

兄弟姉妹が多く、どこか大人びた印象のある子でした。

息子が二十歳、彼女が十八歳のとき、妊娠がわかりました。

ふたりは素直に喜びました。

私も、驚きと不安を抱えつつ、

「結婚を前提に歩んでいくのだろう」と覚悟を決めかけていたのです。

ところが──彼女のお母さんが、猛反対。

ある深夜、怒鳴り込むように我が家を訪れ、こう言いました。

「今の〇〇くんに、うちの娘は任せられません」

私は息子の気持ちを代弁し、

「子育てには協力するつもりです」と伝えましたが、彼女の母親の心は動きませんでした。

それでも彼女は、

「駆け落ちしてでも一緒になりたい」と懇願し、私はその覚悟を受け止め、迎える準備を整えました。

「今日から彼女と一緒に暮らせる」

息子も心から、その日を待ち望んでいたのです。

けれど──約束の時間になっても、彼女は現れませんでした。

携帯もつながらず、不安な気持ちのまま朝を迎えました。

連絡が来たのは、翌日の午後。

「お母さんに無理やり病院に連れていかれて……子どもをおろしたの」

その言葉を聞いたとき、私は言葉を失いました。

抱きしめてあげたかった。

でも、どこにも届かない悔しさだけが胸に残ったのです。

娘の選択

着物を着た女性の足元

息子の出来事から約1年後。

今度は、娘の心にも変化が訪れました。

ある日、娘がぽつりと言いました。

「お母さんに紹介したい人ができたの。こんな気持ち、初めて! 今度会ってね」

瞳をキラキラさせて話す姿に、私も思わずうれしくなりました。

正直なところ、どこかに小さな違和感も覚えていたのです。

紹介したい人って、あの会社の先輩のことよね……?

クリスマスにはディズニーランドでお泊まりデートもしていたし。

お付き合いは、半年ほどになる。

真面目な印象で、いつも丁寧にあいさつしてくれる好青年でした。

でも──そのデートからわずか2週間後、娘は突然こう言いました。

「別の男性を好きになったの」

たぶん、本当は……先輩と一緒にいても、心の奥には何かがあったのでしょう。

成人式当日、娘を迎えに来たのは見知らぬ男性でした。

私の頭の中は、ぐるぐると混乱していました。

娘の話を聞くうちに、少しずつ見えてきたこと。

私が“彼氏”だと思っていた会社の先輩とは確かに交際していましたが、お正月休みに友達に誘われて行った合コンで出会った男性に、心を奪われたのだと。

先輩は「頼れる人」だったけれど、娘にとって“本当に愛する人”ではなかったのです。

安心したかった。

誰かに頼りたかった。

心の隙間を埋めたかった。

その気持ちは、私にもよく分かります。

私自身、かつてそうだったから。

娘の瞳はまっすぐで、強くて、そして確かに、

「本物の恋」を見つけたようでした。

彼女の横顔は、昔の私を思い出させるようでもありましたが、その眼差しは、彼女だけの未来を見つめていました。

どうか──娘が、自分の心に嘘をつかず、本当の幸せを掴んでくれますように

息子と娘のその後

風に揺れるカーテン

息子と娘のその後は対照的でした。

荒れる息子と、見守るしかなかった母

三日月

息子と彼女は、失った子どものことを心に抱えながら、しばらく交際を続けていました。

「自分が頑張らなきゃ」って、必死だったんだと思います。

若さゆえのぶつかり方や、選択もあったけれど、それでもあの子なりに精いっぱいだったのだと思います。

私はただ静かに、若い二人の行く末を見守ることしかできなくて。

結局、2人の交際は長くは続かず、やがて別れを迎えました。

どうにもならない現実の壁に、母として、悔しさと無力さを噛みしめるしかありませんでした。

あの頃の息子の表情は、不器用だけど、まっすぐで。

「父になる」と決めたときの覚悟を持っていた顔。

今もはっきり思い出せます。

その後の息子は、とっかえひっかえ、色んな女の子を家に連れてくるようになりました。

どの娘とも長続きしない。

有り余ったエネルギーを持て余し、彼女のことを忘れよう、忘れてしまいたい。

そんな風に思っていたのだと感じました。

いつか時間が解決してくれる…

息子もいつしか落ち着き、以前の息子に戻っていきました。

娘の旅立ちと、母の祈り

三人親子の後ろ姿

一方の娘は、運命の人と出会い、交際2ヶ月で同棲を始めました。

古い言葉ですが、「どこの馬の骨」とも分からない人と暮らすなんて。

私は賛成できませんでした。

「せめてもう少しお付き合いしてからでも!」と説得しましたが、娘の気持ちは動きません。

ある日、彼が迎えに来ました。

娘がまるでさらわれていくようで、遠いどこかに行ってしまうような感覚でした。

何を話しても、どうしても行くと聞かない娘。

私はまだよく分からないその男性に「娘をよろしくお願いします」と頭を下げ見送ったのです。

彼は、無言でうなずきました。

走り去る車の影をいつまで見ていたでしょうか。

それからしばらくの間、私は仕事も手につかずふさぎ気味になっていました。

そんなある日のこと、突然彼の両親から連絡が!

彼の実家は、我が家から200キロ以上も離れたところです。

「一度お母さんにお会いしたい」とやってきました。

ご両親は、見るからに誠実そうで真面目な方でした。

挨拶も早々に、終始平謝りなさっていました。

正直、何を言われるのかビクビクしていましたが、お話しているうちに、このご両親に育てられた子なら、本当に娘を幸せにしてくれるかもしれないと、思うようになりました。

彼のご両親と会ったことで、胸のつかえがやわらぎ、ほんの少しホッとした気持ちになりました。

同棲を始めてまもなく妊娠が分かり、お腹が大きくなりはじめた春先、ふたりは無事結婚しました。

その日は、娘の20歳の誕生日でした。

彼は22才、大人の年齢とは言え、正直、心配もありました。

でも、娘の笑顔を見て「ああ、大丈夫。幸せそうな顔をしてる」。

小さな団地での暮らしでしたが、彼に愛されていることが、娘の表情にもあふれていて──

「幸せって、こういうことなんだね」。そんな言葉が、自然と浮かんできました。

娘の笑顔が、何より嬉しかったです。

初めは、過去の私と重なるような彼女の選択に、思わず胸が締めつけられましたが、同時に、「私とは違う人生を歩んでほしい」と、心から願いました。

帰ってこられる場所でありたい

夕暮れの海岸でたたずむ人

まだ子供たちが幼かった頃のように温かだった暮らし。

この頃が、親子3人で過ごした最後の暮らしでした。

ふたりとも、それぞれの痛みや悩みを抱えながら、ちゃんと自分で選んで、生きていこうとしていた。

それが、何よりありがたくて、うれしくて。

母として何かできたかと聞かれれば、ただ見守り、話を聞き、温かいご飯を作ること。

それくらいしかできませんでした。

子どもたちの心のどこかに、

あのカレーライスの味が残っていたら、私はそれで十分です。

最初の離婚以来、ずっと賃貸暮らしで、子供たちには実家があるようでない気がします。

それでも、母がいる場所が「帰ってこられる場所」でありたいといつも願います。

母としてやるべきことは、

どんなときも子どもたちの気持ちに寄り添い、信じて待つことだと感じています。

「大丈夫、きっと乗り越えられる」と心の中で唱えながら、そっと背中を見送る。

それが、今の私にできる唯一の役目だと思っています。

【次回予告】

娘が嫁ぎ、心機一転、息子との二人暮らしになりました。

「人生ってどうしてこううまくいかないんだろう。」そんな出来事がまたまた巻き起こります。次回は11回目の引っ越しのお話です。

今日の縁側便り

家庭菜園のミニトマト

縁側に出ると、夕方になっても熱を帯びた風が吹き抜けていきました。

「ああ、夏が始まるなぁ」──そんな気がしました。

家庭菜園のトマトも赤くなりはじめています。

こう暑いと、毎朝の水やりが欠かせませんね。

今日は台所に立たず、ぬか漬けをつまみに、テイクアウトのまぐろ丼で簡単に済ませました。

暑い日の食卓で、子どもたちと一緒に食べたまぐろ丼。

その記憶がふいに戻ってきて、ひと口ごとに笑い声がよみがえってくるようでした。

過去の私にも、今の私にも、小さな「おつかれさま」を。

気負わず、がんばらず、だけど心は込めて。

そんな日々を、これからも続けていけたらと思っています。

新緑の縁側で、ほうじ茶を淹れました

「ばぁばちゃんの台所カフェ」にお立ち寄りくださってありがとうございます。

このブログが、あなたにとっても心の温まる居場所となれば嬉しいです。

これからも、季節の移り変わりや、日々の出来事、そして心温まるレシピなどを、ゆっくりと綴っていきたいと思っています。

どうぞ、これからも気軽に遊びに来てくださいね。

ではまた、お茶を淹れてお待ちしています。

おかえりなさい。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」は、私がブログを書く勇気をもらった千聖の隠れ家メルマガとの出会いから始まりました。あなたも、こっそりのぞいてみませんか?よかったら、訪ねてみてくださいね。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」より

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