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ふうてんの寅子、怖いアパートから逃げるように──18回目の引っ越し

鱗雲と茜色の夕空 ばぁばちゃんの人生アルバム

介護の仕事を始めたころ、心が折れそうになることもありました。

それでも利用者様との出会いや別れに励まされ、

休日には蓬莱橋の風景に癒やされながら、なんとか仕事を続けていました。

前回の記事はこちらからお読みいただけます。

介護の現場と十八回目の引っ越し

段ボールに荷物を詰める女性の手元画像

介護の仕事を始めて二年が過ぎたころ、

地元浜松の隣・磐田市に新しい施設ができることを知り、私は移動希望を出しました。

伊豆の国市から藤枝市へ、

そして今度は磐田へと、またひとつ荷物をまとめることに。

「実家から通うこともできるかな」と一瞬考えたものの、どうしても浜松には戻る気がしなかったのです。

数えてみれば、これが十八回目の引っ越し。

引っ越した数と同じ数ほど職場も変えている事になります。

堪え性が無い性格なのか、元の主人からは「糸の切れた凧」

以前お付き合いしていた彼からは「ふうてんの寅さん」ならぬ「ふうてんの寅子」と呼ばれた私。

なるほど、名前通りよく動く人生だなぁと、我ながら笑ってしまいます。

引っ越しにはお金がかかり、いくら働いても借金は減らないけれど、そのときどきに意味があって、必要に応じて動いてきたのだと思います。

嫌なことがあれば逃げる癖もあります。

でも、それは私なりの自己防衛でもありました。

引っ越し先での近隣トラブル

引っ越し先のアパートの共有通路の様子

ところが、引っ越し先のアパートでは思いがけない出来事が待っていました。

私は二階に住んでいたのですが、下の階の男性から「夜遅く物音がする」と言いがかりをつけられたのです。

確かに、引っ越しして間もないころは、日中仕事をして、荷解きは深夜に及ぶこともありました。

音が響いたのかもしれません。

それでも最新の注意を払い、休日も相手が外出するのを見計らって掃除機をかけるような暮らしでした。

下の階の男性の物音だって十分こちらに聞こえます。

集合住宅ならこういった状況はよくある出来事でした。


それなのに、下の階の男性は神経質なのか、不眠症なのか。

自分の部屋の天井を何かで突くようになり、私の部屋の床にドンドンと音が響きました。

まるで「うるさい!静かにしろ」と物で訴えられているような感覚です。

ある深夜、周りがシンと静まり返る時間帯に、

名前も名乗らず「おい、顔を出せ!」と玄関を叩きながら怒鳴り込んできました。

一度も顔を見ていない相手でしたが態度で下の階の男性だと分かりました。

その時私はテレビを観ていただけです。音量だって小さくです。

私は恐怖で玄関を開けられず、鼓動は荒く、指先も震えていました。

管理会社に相談しても「今まで苦情は受けたことがない」と真剣には取り合ってくれず、私は次第にビクビク暮らすようになりました。

一番休まるはずの自宅が怖い場所になり、心身ともに疲れ切っていったのです。

実家に戻る決断

実家の古い畳に射すやわらかな日差し

近隣トラブルの話を母にしたところ、

母は「それならここに戻ってくれば」と勧めてくれました。

父が亡くなって一年ほど経ち、母もひとり暮らしに寂しさを感じていたようです。

周りも「ちょうどいいタイミングじゃない?」と。

けれど本心は、できることなら母に頼りたくありませんでした。

父という、私と母の間を取り持ってくれていた存在がいない実家。

母とは幼いころからのわだかまりも消えておらず、二人暮らしには不安がありました。

「今度こそは出たり入ったりは困るからね」という母の言葉にも胸がチクリ。

8年前、父との大げんかと母との気持ちのすれ違いで伊豆へ逃げた私です。

おめおめと実家に戻ることに戸惑いがありましたし、お金があれば別のアパートを探していたかもしれません。

でも、引っ越し先のアパートにいたら本当に気がおかしくなりそうで、泣く泣く実家に戻ることにしたのです。

これからの私

カーテン越しの窓辺に夕日が射す様子

母と暮らし始め2年が過ぎました。

小さな口げんかはよくあります。

それでも母は、何事もなかったようにニコニコ話しかけてきます。

逆に腹を立てている自分がバカバカしくなったり情けなくなったりで毎日が過ぎていきます。

心のどこかで「二十回目も、あるかもね」と、ふうてんの寅子の血が騒ぐ私がいますが、

さすがに次回の引っ越しは慎重にしなければなりません。

度重なる引っ越しのおかげで、身の回りはすっかりコンパクトになりました。

開けてもいない段ボールが「タンスの肥やし」だと気づかせてくれたのも、引っ越しの効能のひとつです。

長女として母の面倒を見なければいけないと思う反面、

「どうして私ばかり」と気が重くなることもあります。

父の介護は、何の迷いもなく休職して看取りまで出来たのに、

母との最期の予想図が、なぜか見えてきません。

介護現場でも多くの方の見取りに立ち会っているのに…

そんな気持ちを娘に話したら、

「お母さん一人で抱え込まなくても良いと思うよ。

妹が二人もいるんだから、みんなで考えればいいんだから」と言ってくれて、少し気持ちがほぐれました。

変なところで責任感が強いかと思えば

転職回数も多いし、

自分でも自分がよくわからなくなります。

でも、そんな私だからこそ、まだ見ぬ新しい場所にも希望が持てるのかもしれません。

今日の縁側便り

シロクマアイスを木のお匙でつつく様子

買い物に出かけると、店内はもう秋服がズラリと。

でも、こう暑いと「まだ、いいかな」って、まったく気分が乗りません。

秋服よりも、Tシャツにかき氷の方がまだ似合う気がします。

店先で目に留まったシャインマスカット。

今年は猛暑のせいか、例年より小ぶりで、粒もぎゅっと詰まった感じです。

「暑くて今年も大変だったね」と、ついシャインマスカットに心でねぎらってしまいました。

こんなに暑い日が続くと、秋の訪れもまだまだ先のことのように思えます。

ふうてんの寅子の旅はまだ途中

お風呂上がりに縁側に出て、シロクマアイスを手に空を眺める。

ゆるりと気持ちを整える夜のひと時が好きです。

今日もお話を聞いてくださって、ありがとうございます。

ばぁばちゃんは、いつも心の中のお店をそっと開けています。

それではまた──お茶を淹れて、お待ちしております。

おかえりなさい。

以前、心にモヤモヤを抱えていた頃に、千聖の隠れ家メルマガに出会ったんです。 温かい言葉に、どれだけ大きな勇気をもらったことか…。本当に救われました。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」から、そんな思い出を込めて。

今、好きなことを仕事にする生き方を未来型*夢の降る道で学んでいます。

まるで大人のための寺子屋みたいなイメージか

ここでは、「山ごもり仙人」と呼ばれる、面白くて個性豊かな竹川さんと、

私の閉ざされた心を少しずつ丁寧にほぐしてくれた千聖さんに出会うことができました。

なんだか、こっそり覗いてみたくなりませんか?

未来型*夢の降る道 好きな事を仕事にする生き方の紹介画像
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