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泣きながら歌った「七つの子」─母になった私と6回目の引っ越し

真っ白な壁に立てかけられた、引っ越しの段ボール ばぁばちゃんの人生アルバム

念願の団地暮らしでしたが、

あの「ゴキブリ事件」がきっかけで、私たちは団地を出ることになりました。

慌ただしく荷物をまとめるなか、
体の変化に気づいたのです。

「え?まさか……私、妊娠してる?」

驚きと不安を抱えて病院へ行くと、
本当に、小さな命が宿っていました。

不安はある。

だけど、お腹のなかの小さな命が、
私に不思議な力をくれました。

こうして私は「引っ越し第5号」として、
主人の実家へと戻ることになりました。

前回のお話はこちらからお読みいただけます。

第2話 年子の子育てと、夫の止まらない転職

山を見つめる、若い妊婦さん

山あいにある主人の実家は、空気もよく、のどかで。
「ここでまた、がんばろう」と思いました。

間もなく、長男が誕生。
それからすぐ、次の生理を待たずして、長女を授かりました。

年子のふたりを育てる毎日。
洗濯、授乳、おむつ替え…まるでエンドレスのループ。

育児は、まさにてんてこまい…

一日があっという間に過ぎていきます。

山に沈む夕日

裏山に日が落ちるころになると、小さな子どもたちがぐずり始め、
私は「かーらーす、なぜ鳴くの」と子守唄を歌いながら、
子どもと一緒に泣いた日もありました。

……あの日の自分を、いまでも忘れません。

「ここで、頑張るしかない」
そう覚悟を決めてはいたのですが、現実はなかなか厳しいものでした。

主人は結婚当初、大手企業に勤めていました。

収入も安定していて、将来への不安などなかったのに──

その仕事を辞めてからというもの、転職を繰り返す日々。
最短で3日、長くても3ヵ月と長続きません。

そのたびに生活は苦しくなり、
買い物のたびに財布の中を何度も見てはため息。

「この先、どうなるんだろう」──そんな不安が、日に日に募っていきました。

育児真っ只中のわたしでしたが
働かなくては、暮らしていけない状況に追い込まれていったのです。

山の中で、働く場所がない

子どもはまだ小さく、お金も心細い。

「このままじゃダメだ」
そう思った私は、働く決意をします。

けれど、現実はそう簡単ではありませんでした。

主人の実家は山あいの集落。

「私が働くしかない」と思い立ったものの、

保育所どころか、仕事先もほとんどありません。

「働きたいのに、働けない」
このもどかしさが、
胸の奥に静かに積もっていきました。

「もう限界かもしれない」

そう思い始めた私は、主人に言いました。

「町の中に引っ越そうよ」

何度も話し合い、押し問答が続きました。

若さもあったのでしょう。

わたしは少し強引に、ときに涙を流しながら、

町の中にある雇用促進住宅への引っ越しを提案し、説得しました。

何度も何度も話し合いを重ね、
喧嘩になりながらも、
ようやく主人も納得してくれました。

雇用促進住宅へ、引っ越し第6号

昭和時代に建てられた雇用促進住宅

こうして決まった「引っ越し第6号」
新しい住まいは、町の中にある雇用促進住宅

ここから、私たち家族の新しい生活がまた始まったのです──。

保育所もスーパーも、徒歩圏内。

最低限の設備ですが、お家賃が安く、真っ白の壁がとても新鮮でした。

お金はなかったけれど、
嫁入り道具(タンスや布団、食器棚)一式を運び込み、
小さな新生活が始まりました。

2人の子供を保育所に預け、飲食店のウエイトレスとして働き始めました。

コーヒーとポットのイラスト画像

保育所に預け始めてしばらくは、

縁側の隅っこで「かあかん、かあかん」と泣き叫んでいた子供たち。

幼き日の息子の声は、今でも耳に残っています。

後ろ髪を引かれる思いで職場へと向かい、4時間のアルバイトです。

明細に並ぶ数字は、たった7万円ほどでした。

それでも私には、その数字が嬉しくて、しばらく見つめてしまいました。

数行の数字に、これまでの日々が思い出され──気づけば、目が潤んでいました。

住まいも、暮らしも、人間関係も。
変えるには、たくさんの勇気がいります。

不安を抱えながらも、
それでも私は一歩、踏み出すしかなかった。

あの頃の自分に言ってあげたい。
「よくがんばったね」って。

泣いてばかりだった子供たちも、

先生たちのご協力のおかげで、

楽しい生活を送れるようになっていきました。

でも、町に出ればすべてが解決する──そう思っていたのに、現実はまた違う形で私たちを試してきたのです。

【次回予告】
雇用促進住宅で新しい生活を始めた矢先──主人は又転職を。
今回の転職はいつもと違う働き方でした。

今日の縁側便り

我が家の庭のピンク色のがく紫陽花。見ごろを迎えました。

庭の紫陽花が見ごろを迎えています。

来週には梅雨入りの予報。

空の色も、なんだか思い悩んでいるよう。

晴れ間のうちにと庭の草取りをしていたら、雨蛙がぴょん。

季節は、ほんとうによく知っていますね。

湿気と上手につきあいながら、心はカラッと晴れやかに過ごせますように。

紫陽花の葉にアマガエルがぴょこん。

これからもゆっくりですが、

ばぁばちゃんの人生アルバムとして

「引っ越し19回の物語」を、回想しながら綴っていきたいと思います。

このブログが、あなたにとっても心の温まる居場所になれば嬉しいです。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」にお立ち寄りくださってありがとうございます。

また縁側でお待ちしていますね。

おかえりなさい。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」は千聖の隠れ家メルマガとの出会いから始まりました。よかったらのぞいてみてくださいね。
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