時々、思い出の場所を訪れたくなることがあります。
あの頃の自分と、今の自分が交差する場所。
変わらない景色に心が温かくなりながら、ふと立ち止まり、時間を感じる瞬間。
そんな場所が、私には御前崎灯台のすぐ近くにあります。
かつて家族と、友人と、何度も足を運んだあのご飯屋さん。
しかし、今その店はもう、私が知っていた姿ではなくなっていました。
でも、たとえ店が変わっても、あの海の景色だけは、私の心の中で変わることはありません。
「ただいま」と言いたくなる、あの場所。
今日はそのことを、少しだけお話ししたいと思います。
変わってしまった店

その御前崎灯台 思い出の店「紀行茶屋」は、御前埼灯台の間近にあります。
海抜35メートルから遠州灘を一望できる絶景が特徴で、30年以上ににわたり、地元住民や県内外の観光客に親しまれてきたお店です。
海を見下ろす絶好のロケーションにあって、漁師町のお母さんが切り盛りしていた活気あるご飯屋さんでした。
免許取りたての頃から、通い続けたあのご飯屋さんが、もうなくなってしまっているなんて、信じられませんでした。
最初にその店を見たとき、「あれ?」と思いました。

店構えがまったく違う!
「晴れと sora Cafe」!?
今やおしゃれなカフェに変わっている。
心の中で何度も「どうして…?」「お母さんはお元気かな・・・」と不安を抱えつつ、思い切ってそのドアを開けました。
変わらない景色

店の中に入ってみると、かつての賑やかさが嘘のように静かで、オシャレな雰囲気。
でも、外の景色は変わっていません。
この海と御前崎灯台が、まるで何もなかったかのように目の前に広がっています。
それでも、心はどこか落ち着かない。
思い出があまりにも強くて、変わった店内とのギャップにしばらく戸惑ってしまいました。
お母さんの笑顔、今も心の中で
かつての店の様子

漁師町のお母さんはもういませんでした。
いつも頼んでいない料理まで出してくれたお母さん。
気さくでおおらかだったあの笑顔が今はもう、ここにはない。
大きく切り出したマグロの刺身。

期待したメニューはもうありませんでした。
でも、ふと店内を見渡すと、明るく忙しそうに接客している女性の姿が目に留まりました。
その笑顔と元気さに、どこかお母さんの面影を感じて、なんだかホッとしました。
もしかしたら、娘さんなのかな?
そんなことを考えながら、海を見つめていると、少しだけ温かい気持ちになりました。
おしゃれなカフェに生まれ変わった今でも、
御前崎灯台 思い出の店としての面影を探してしまいます。

ただいま、また帰ってくる

私は今でも、時々この海を見に行きます。
嬉しい時も、悲しい時も、この海に来ると不思議と落ち着くのです。
「この海を見て、よく泣いたっけ。」
「この海で、よく笑っていたな・・・」

海の前に立つと、心が軽くなり、自然と「ただいま」と言いたくなるような、そんな感覚を覚えます。
昔も、今も、変わらずに見守ってくれている御前崎灯台。
またこの海に会いに来よう。
懐かしいお母さんは、もういないけれど、
「やっぱり、あの場所は私の御前崎灯台 思い出の店なんだ」と思えたから。
たとえお店の中の景色が変わってしまっても、この海は、私にとってずっと大切な場所であり、心の支えです。
今日の縁側便り

時は流れて、いろんなことが変わっても、変わらないものがある。
それは「記憶」と「風景」。
どんなに歳月が過ぎても、私はまた、この海に帰ってくるだろうな。
そして、また「ああ、ただいま」と訪れることを楽しみにしているのです。

いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。
これからも、日々の小さな発見や想いを、この縁側からお届けしていきますね。
どうぞ、これからも気軽に遊びに来てくださいな。
縁側でお茶を淹れてお待ちしています。

おかえりなさい。
「ばぁばちゃんの台所カフェ」より