汚部屋、機械浴、冷蔵庫タンス“自立型”サ高住のウラ側

「身体介護がないから、サ高住はきっと楽なんでしょう?」
そんなふうに思って転職した私が見たのは、想像以上に“人の暮らし”に寄り添う日々でした。
汚部屋、機械浴、冷蔵庫の中に下着・尿取りパット……
これは、サ高住で働く人だけが知っている、もうひとつの現実です。
転職のきっかけは「体力の限界」

私は以前、グループホームで働いていました。
認知症の利用者さんと過ごす毎日は学びが多く、やりがいもありましたが、夜勤や身体介護も多く、次第に体力の限界を感じるようになりました。
「もう少し体にやさしい働き方ができないかな」
そんな思いから、身体介護のないサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に転職したのです。
ところが
実際に働き始めてみると、想像していなかった“別の大変さ”があったのです。
想像以上に多かった“汚部屋”
「※画像はイメージです」実際は想像を超える汚さでした。

たしかに、入浴や排泄の介助はかなり少ないです。
その点では、体への負担はぐっと減ったように思います。
サ高住にお住まいの方は、基本的にはお元気な高齢者の方々です。
でも、お部屋を訪ねてみると、予想外の光景に驚かされることが少なくありません。
ゴミ袋がいくつも積まれていたり、カビが生えた食器がテーブルの上や洗面所に残っていたり。
モノがあふれ、足の踏み場がないほど物が散らかっている。
トイレの床や、棚の上に排泄物があったり・・・
いわゆる「汚部屋」と呼ばれるような状態の方が、思っていた以上に多かったのです。
もちろん、すべての方がそうというわけではありません。
けれど、決して珍しいことでもないのです。
認知症の方も、実は多い

そして認知症の方も少なくありません。
会話は普通にできても、部屋に入るとゴミが溜まっていたり、冷蔵庫に賞味期限切れの食品がずらりと並んでいたり。
中には、冷蔵庫をタンス代わりに使っている方もいて、靴下や紙パンツが入っていたこともありました。
「ここでも認知症のケアが必要なんだな」と感じることも、たびたびです。
なぜこんなにお部屋が荒れてしまうのか。
最初は不思議でしたが、だんだんと理由が見えてきました。
高齢になると、体を動かすのが億劫になったり、認知機能が少しずつ落ちてきて、物の整理やゴミの処理が難しくなったりします。
中には、片づけが苦手だったり、
「捨てるのがもったいない」という気持ちが強かったりする方もいます。
そして、周囲に家族や訪問者が少ないと、自分の暮らしを見つめ直すきっかけもなかなかありません。
上司からは「決して物を動かしたり、勝手に捨ててはいけないからね。」と・・・
掃除をしながら、そんな方々の「生きづらさ」にも、そっと触れているような気がするのです。
冷蔵庫=食べ物を保管する場所、という常識が通用しない状況に出会うと、やはり切なくもあり、危機感も感じますね。
“身体介護なし”のはずが…お風呂や排せつの支援も

身体介護がないからといって、サ高住の仕事が楽だとは言えません。
体力的な負担は軽くなったかもしれませんが、実際には介護に近い場面もたくさんあります。
車椅子の方には、機械浴での入浴介助が必要ですし、
浴槽をまたげる方でも、背中を流したり、頭を洗ってあげたり。
さらに、排せつ後にうまく拭けず、下着やシーツが汚れている方も多くいらっしゃいます。
サ高住は「身体介護なし」とうたっていますが、現実はそう単純ではありません。
想像以上に、“軽度”とは言えない介護度の方も多いと実感しています。
今日の縁側便り

それでも、やっぱり人のために働きたい。
基本的には「自立している方の住まい」として作られたサ高住ですが、
実際の現場では想像以上に介護度が高い方も多いのが現実です。
でも、だからこそ。
ほんの少しの手助けや声かけが、その人の一日を安心に変えることもあります。
自立と支援、その間をそっと埋めていくような仕事なのかもしれません。
今日のお話が、サ高住で働いてみたいなと思っている方の参考になれば、うれしいです。

ここは、いつでもふらりと立ち寄れる場所。
あなたと静かな時間を過ごしたくて、ブログの中に「実家のような、いつでも帰ってこられる場所」を作りました。
これからも、季節の移り変わりや、日々の出来事、そして心温まるレシピなどを、ゆっくりと綴っていきたいと思っています。
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ではまた、お茶を淹れてお待ちしています。
読んでいただき、ありがとうございます。

おかえりなさい。
「ばぁばちゃんの台所カフェ」より