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私の頭の中のお母さん、さようなら。もう『見本』を演じるのはやめます

家族のはなし

「ちゃんとしていなさい」という名の呪縛

母が旅立ったわけではない。

けれど、心の中で長年住み着いていた

「頭の中の母」に、そっと別れを告げようと思うのです。

私の中にいた母は、いつも毅然として、

何が正しいかを知っていて、そして、どこか恐ろしい存在でした。

時折見せる優しさが、余計にその存在を大きく感じさせたのかもしれません。

そして、私に向かっていつも囁いていたのです。

「ちゃんとしていなさい」と。

「自分で選んだ道でしょう? 仕方ないじゃない」

「お姉さんなんだから、もっと頼りになるのよ」

「妹たちの模範とならなくては駄目よ」

それらの言葉は、

いつしか私にとって逃れられない呪文となり、

重い足かせのように人生にまとわりついてきました。

泣きたい気持ちを押し殺し、

誰かに頼りたい弱音を飲み込むたびに、

その言葉が心の奥底で警鐘を鳴らすのです。

「私が我慢すれば、母は穏やかでいられる」

「そうすれば、家庭は円満に保たれるのだ」

幼いながらにそう信じ込み、“良い子”を演じることに必死だったのです。

母の影を離れても消えなかった言葉

大人になっても、その呪縛は解けることはありませんでした。

何かを選択するたびに…

「本当にそれで良いの?」

「それは甘えではないの?」

まるで背後から見つめるような、母の声が脳裏に響くのです。

実家を離れて四十年の歳月が流れましたが、私の心には、常に“母のまなざし”が住み続けていました。

「酷い娘だと思った、けれど…」

3年前に父が亡くなりました。

そして、2年前から始まった、母との同居生活。

ついに、私は堪えきれずに口にしてしまったのです。

「お母さんのことを、ただの84歳になった人、ただのお婆ちゃんと思えば・・・」

そうすれば、湧き上がる怒りを鎮められるかもしれない。

感情的にぶつかることを避けられるかもしれない…

そんな思いが、衝動的に言葉となって溢れ出たのです。

なんて酷い娘だろう。

そう自責の念に駆られました。

それでも、心の奥底から湧き上がるその言葉を、止めることはできませんでした。

「本当はただ、認めてほしかった」

本当は、母に対して怒りを抱いていたわけではありません。

ただ、深く悲しかったのです。

幼い頃からずっと、ただ一言、認めてほしかった

「よく頑張ったね」

「もう無理をしなくてもいいんだよ」

「あなたの気持ちもちゃんと分かっているよ」

ただ、その一言が聞きたかっただけなのです。

母の期待に応えようと、

“お姉ちゃん”という役割を演じ続けるうちに、

いつの間にか自分の本当の感情が分からなくなっていました。

自分の人生であるはずなのに、

常に母の価値観というフィルターを通して世界を見ていたのです。

何を着るか選ぶ時でさえ、

「母親らしい装いをしなさい」という声が聞こえるような気がして、

無難な服ばかりを選んでいました。

本当に何をしたいのか、

何が好きだったのか、

自分自身の内なる声は、いつの間にか聞こえなくなっていたのです。

自分の人生を生きているはずなのに、どこか他人の視線を通して生きていました。

母のまなざしを手放し、私自身の人生へ

でも、もう終わりにしよう

母の言葉を手放すことは、決して母を否定することではありません。

それは、私を大切に育ててくれた母への感謝の気持ちとは、全く別の次元の話なのです。

ただ、これからは“母の定規”ではなく、

私の心の秤”を信じて生きてみたい。

心がときめくものを素直に選び取り、本当にやりたいことに躊躇なく挑戦してみたいのです。

それは、母との間に、私らしい心地よい距離感を見つけるための選択。

そして、何よりも、自分自身の心の声に、もっと耳を傾けたいと強く思ったからです。

それは、ようやく私自身を、ありのままの私を認めてあげられるようになった、ということなのかもしれません。

今日の縁側便り

私の頭の中にいたお母さん、さようなら。

あなたに縛られていた、かつての私も、今日でさようなら。

これは、私自身を解き放つための、最初の一歩となるはずです。

これからは、“誰かの理想像”ではなく、

ただの私として、静かに、そして自由に、生きていきたい。

ここは、いつでもふらりと立ち寄れる場所。

あなたと静かな時間を過ごしたくて、ブログの中に「実家のような、いつでも帰ってこられる場所」を作りました。

まるで、ふと実家に帰ってきたような気持ちになってもらえたら嬉しいです。

もしかしたら、あなたの心の中にも、

まだ手放せずにいる“誰かの言葉”が潜んでいるかもしれません。

どうか、あなた自身の心の声に、そっと耳を澄ませてみてください。

これからも、季節の移り変わりや、日々の出来事、そして心温まるレシピなどを、ゆっくりと綴っていきたいと思っています。

どうぞ、これからも気軽に遊びに来てくださいね。

また、縁側でお茶を淹れてお待ちしています。

読んでいただき、ありがとうございます。

おかえりなさい。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」より

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