娘の出産と、48歳で迎えた新たな転機
債務整理が終わり、少しずつ日常に落ち着きが戻り始めた頃。
そんな時、娘のお腹に新しい命が宿ったことを知りました。
忙しない毎日、経済的な不安、娘夫婦への気がかり……。
それでも、初めての「ばぁばちゃん」としての未来を想う時間は、何よりの心の支えでした。
48歳で迎える新たな役割に、喜びと少しの戸惑いを抱えながら過ごした日々を、今回は綴ってみようと思います。
前回は債務整理を終え、新たなスタートを切ったところまでを綴りました。
よろしかったらこちらの記事をお読みください。
生活の中のささやかな楽しみ

債務整理を終えてから、気づけば季節がひとつ巡っていました。
仕事は相変わらず忙しく、時間に追われる毎日でしたが、『なんとかなるさ』という気持ちが、少しずつ心に根づいてきました。
とはいえ、生活に大きな余裕ができたわけではありません。
生まれてくる孫のために揃えるものはたくさんあり、貯金もない状態。
稼いだ分で何とかやりくりする毎日でした。
そんな中でも、毎月一度の娘とのランチは、ささやかな楽しみ。
お腹がふっくらしていく様子を見るたび、小さな妄想がふくらみました。
「赤ちゃんが生まれたら、こんな場所に連れて行きたいね」と、笑顔があふれました。
お金のないときに限って…
ちょうどその頃、冷蔵庫が壊れたりテレビが映らなくなったりと、電化製品が一気に故障するトラブルが重なりました。
そういえば、元夫と別れてからもう13年が経っていました。
購入から13年が経っていたので、そろそろ買い替えの時期だったのかもしれません。
「なんで今なの……」とため息。
まとまったお金がないために頭を抱えました。
それでも娘と過ごす時間や、赤ちゃんの話題で心を紛らわし、何とか乗り切っていきました。
6ヵ月検診で女の子とわかっていたので、「女の子の服って、ほんとに選びがいがあるね!」と、ふたりして笑い合ったのをよく覚えています。
娘の夫のことが気になっていた

ただ、気がかりだったのは娘の夫のこと。
大学を卒業していたものの、定職にはつけずに風俗のアルバイトや治験で生活を支えていました。
正直なところ、彼のことは理解しきれない部分もありましたが、娘が心から愛していることだけは確かでした。
娘によれば、経営学を学んでいたとのことですが、いつも自己啓発本を読んでは何かを思い巡らせている様子。
将来に向けて準備していたのかもしれません。
反対する私を押し切るように始まったふたりの結婚生活。
お金の苦労は絶えなかったと思います。
彼のどこにそんなに惹かれたのか、当時の私には理解できませんでした。
妊娠中も「バイトをしろ」と言われた娘。
彼の言葉に驚いたこともありましたが、娘は文句ひとつ言わず、コンビニで働いていました。
それでもふたりは、とても仲が良く、私はただ彼女の幸せを願うばかりでした。
娘の選んだ人だから
娘たちが新婚当時、暮らしていた団地

「子どもが生まれたら、彼も変わるかもしれない」
そんな小さな期待も、心のどこかにあったのです。
彼が赤ちゃんのエコー写真を見て、少し照れたように笑った日のことを思い出します。
あんなふうに笑う人が、本当に悪い人のはずがない。
娘の好きになった人。
だったら、私もその人を、少しでも理解しよう。
そして、仲良くしていかなければ──
そう思っていました。
家族になるということは、そういうことだと信じていたから。
出産が近づくなかで
やがて、娘の出産予定日が近づいてきました。
初めての孫を迎えることが嬉しい反面、私は仕事の都合がどうしても気になっていました。
私は店舗の責任者。急に休むことはできません。
でも、できることなら、出産のその日には娘のそばにいてあげたい。
「どうか私の休みの日に生まれてきてくれますように」
そう願いながら、毎日を過ごしていました。
真夜中の連絡、走る私

ある夜中、娘の旦那さんから「明日の朝に生まれそうだよ」という連絡が入りました。
(明日は仕事……立ち会えないじゃない!……)と思いつつ
私は夜中に店に向かい、開店準備をすべて済ませました。
バイトの子が9時に出勤してきます。
11時開店の店には、こんなメモを残して
娘の赤ちゃんが生まれそうなのでよろしくお願いします
と伝えました。
朝9時に電話で事情を話すと、彼は明るくこう言ってくれました。
「店長、大丈夫です。任せてください」
その一言に、思わず涙が出そうになりました。
嬉しい言葉をもらい、少し安心できました。
若い彼の頼もしさに、心から感謝した朝でした。
【次回予告】──ついに迎えた出産の日。
“おばあさま”って私のこと? キョロキョロ辺りを見回してしまいました。
次回は、思わず笑ってしまった「ばぁばちゃんになった日」のこと、その日感じたこと、について書いてみたいと思います。
今日の縁側便り
お気に入りのブルーサルビア

7月の風が、ゆっくりと庭の草花を揺らしています。
梅雨は明けたものの、セミの声はまだ聞こえてきません。
そういえば、あの夏もこんな静かな朝でした。
私にとって特別な夏──
「ばぁばちゃん」になった、忘れられない7月。
あれから16年。
手放しで可愛い、可愛いと思っていた初孫。
今では漫画家を目指し、「頭の中が描きたいものでパンパン!」なんて笑いながら、毎日ペンを走らせています。
あの小さな産声が、
今じゃ立派なセリフになって吹き出しの中で元気にしゃべってる。
かも⁉なんて思うと、つい笑ってしまいます。
「ばぁばちゃん」と呼ばれるようになった日から、私の人生もまた新しいページをめくり続けています。

いつも、お話を聞いてくださりありがとうございます。
「ばぁばちゃんの台所カフェ」は本当のお店ではないけれど、
心の中にある 「実家のような、いつでも帰ってこられる場所」 をブログの中に作ってみました。
子どもや孫たちが、いつでもふらりと立ち寄れる場所。
優しい言葉、そしてゆったり流れる時間。
そんなひとときを、このブログを通してお届けできたらいいなと思っています。
まるで実家に帰ってきたような、そんな気持ちになってもらえたら嬉しいです。
これからも、季節の移り変わりや、日々の出来事、そして心温まるレシピなどを、ゆっくりと綴っていきたいと思っています。
どうぞ、お気軽に遊びに来てくださいね。
ではまた、お茶を淹れてお待ちしています。

