ばぁばちゃんと孫の物語

孫が、幼稚園の頃に描いた絵本。
「おはなのプリンセス」が、引き出しの奥にそっとしまってあります。
たまにページをめくると、幼かった彼女の純粋な心や優しさがにじみ出ていて、胸がじんわりと温かくなります。
今、彼女は高校1年生。
学校に馴染めなかった中学時代を経て、自分のペースで通えるフリースクールを選びました。
そんな彼女が今も続けているのが「描くこと」。
この絵本と今の彼女の姿を重ねながら、ひとつの成長物語を綴ってみたいと思います。
幼い頃に描いた、やさしさにあふれた絵本
お花の中で生まれた“ミーちゃん”というプリンセスが、虫たちと仲良く暮らすという、
やさしさにあふれた物語。



ところが嵐に見舞われ、お花の家を失ってしまったミーちゃん。



泣いているところを見つけたプリンスと仲良くなり、

やがてふたりは大人になり、結婚する──。

子どもの描いた小さなお話ですが、
ページをめくるたび、心がふわりとあたたかくなります。

裏表紙の、こんなやさしい気遣いに、私は思わず目を細めてしまいました。
「ばぁばちゃん」と呼んでくれた日々

そんな彼女は、幼い頃から私を「ばぁばちゃん」と呼び、よく笑い、
お人形遊びのなかでも、いつも「プリンセス役」を自ら選んでいた子でした。
ドレスを着て、ティアラをかぶって、きらきらと目を輝かせながら、
「私はプリンセスなのよ」と誇らしげに言っていたあの姿が、今も忘れられません。
少女のこころに寄り添った1冊の漫画
けれど、中学生になってからの彼女は、少し変わりました。
クラスに馴染めず、保健室で過ごすことが多くなり、
そのうちリモート授業になって、学校との距離をゆっくりととるようになっていきました。
そんなある日、彼女が珍しく「欲しい漫画があるの」と私におねだりました。
タイトルは「空っぽのやつでいっぱい」。
手に取って読んでみると、そこには孤独や寂しさ、生きることのつらさを表現した世界。
それでもどこかにある“わずかな希望”が描かれていて、胸がぎゅっと締めつけられました。
対照的な世界にある、同じ心の種
「おはなのプリンセス」が明るくほのぼのとした世界だとしたら、
「空っぽのやつでいっぱい」は、生きることへのつらさや揺らぐ感情を描く切ない世界。
まるで光と影のように対照的でした。
けれど、どちらの物語も、彼女の中にあるものなのでしょう。
小さな頃から優しさを大切にし、悲しいことにも目をそらさず、感じ取ってきたからこそ描ける世界。
その両方があるからこそ、彼女は今も漫画を描き続けているのだと思います。
そして今も、描き続けている

高校生になった今は、週に一度、フリースクールに通いながら、自分のペースで学び、ゆっくりと歩んでいます。
昔のようにおしゃべりする時間は減りましたが、「ばぁばちゃんが作るご飯は全部おいしい!」と、今でも笑顔で言ってくれるんです。
その姿は、幼い頃にプリンセスに憧れていた彼女そのもの。
「頭の中が描きたいものでいっぱいで困っちゃう」そう笑いながら話す彼女の横顔を見ていると、私はそっと、あのミーちゃんの物語を思い出します。
描くことは、自分と向き合うこと
お花の家を失っても、涙のあとに新しい出会いがあったように、彼女の人生にも、たくさんの物語が待っている。
フリースクールを卒業したら、ときわ壮プロジェクトへの参加を希望している彼女。
どんなページが綴られていくのか、それを楽しみに見守っていたい。
心配はつきませんが、ばぁばちゃんは、そう思うのです。
今日の縁側便り

ふと庭を見ると、白いシャガの花がひっそりと咲いていました。
日陰の片すみに、凛と立つその姿は、どこか気品があって、けれど控えめで。
まるで“おはなのプリンセス”が、もう一度戻ってきてくれたようでした。
そっと「おかえりなさい」と、声をかけた早朝のひとときでした。

ここは、いつでもふらりと立ち寄れる場所。
あなたと静かな時間を過ごしたくて、ブログの中に「実家のような、いつでも帰ってこられる場所」を作りました。
まるで、ふと実家に帰ってきたような気持ちになってもらえたら嬉しいです
これからも、季節の移り変わりや、日々の出来事、そして心温まるレシピなどを、ゆっくりと綴っていきたいと思っています。
どうぞ、これからも気軽に遊びに来てくださいな。
ではまた、縁側でお会いしましょうね。
お茶を淹れてお待ちしています。
読んでいただき、ありがとうございます。

おかえりなさい。
「ばぁばちゃんの台所カフェ」より