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うつ病の娘が見せた初めてのやる気──民泊管理人という新しい仕事

明るい光が差し込むダイニングテーブル ばぁばちゃんの家族

うつ病とともに歩んできた娘に、ぴったりの仕事が見つかったかもしれません。

以前、娘のうつ病についてお話しさせていただきました。

一進一退の波はありますが、最近は少しずつ情緒が落ち着いてきたように感じます。

その理由のひとつは、娘にとって心からワクワクできる、やりがいのある仕事が見つかったことです。

「この仕事、やってみたい」──

娘がそう口にしたとき、思わず涙がこぼれそうになりました。

長いあいだ、無気力や希死念慮に苦しみ、

自分の気持ちを言葉にすることすら難しかったあの子が、

今、「民泊の管理人」という新しい役割に挑戦しようとしています。

一般の会社員のように決まった時間に働くことや、

人と深く関わることはまだ苦手ですが、

今回の仕事は娘のペースに合っていて、少しずつやる気を見せ始めました。

今回は、その小さな変化と、私の心に灯った希望について書いてみようと思います。

同じように、お子さんの回復を信じて待ち続けている方へも、そっと寄り添えたら嬉しいです。

娘、民泊の管理人になる

娘の夫は自営業で、インターネットの接続や引っ越し、遺品整理、草取りなど──

言わば“何でも屋さん”です。

人脈が広く、あるお客様との出会いから、民泊の管理人の仕事を任されました。

「何とかなるやろ」のノリじゃあできない

旦那さんはバリバリの関西人。

いつものように「何とかなるやろ」のノリで引き受けたようです。

二つ返事で軽く引き受けたものの、実情は自分の抱えている仕事で精一杯。

特に今年の夏は、草取りの依頼が驚くほど多いそうです。

分かります。

だって、連日のこの猛暑!

特にご高齢の世帯からの依頼が次から次へと舞い込んできます。

私が娘宅を訪ねた週末も、旦那さんは仕事に出かけていました。

現場は近場ばかりでなく、長い距離を移動する場合もあるようです。

今年はついに、冷却装置つきの作業服を導入。

毎日、フル活動しているみたいです。

そんな訳で、娘に管理人の仕事を任せる事にしたのです。

娘にとって、初めて心が動いた仕事

清潔で広々とした新築住宅の脱衣室。収納棚と洗濯機スペースが整った空間

普段の娘は、旦那さんを手伝い、

家事の合間に伝票の整理などをしています。

今回の管理人の仕事は全て娘に任せたいと旦那さんは希望しています。

依頼主さんとの賃金の交渉以外は、全て娘がやらなければなりません。

チェックイン前後のリネン類の準備から、備品の管理や清掃まで、すべて娘が担うことになります。

娘は結婚してから17年間、外で働いた経験はほとんどありません。

アルバイトを試みたこともありましたが、長続きはしませんでした。

繊細な心の持ち主ゆえ、少しのことで気力を失い、ふさぎ込んでしまう──。

家は、そんな娘にとって唯一の心の隠れ家でした。

家が大好き、一番居心地がいいのです。

(民泊の管理人に……本当に大丈夫かな)

心の中で私は心配ばかりが先行していました。

ところが、娘が民泊の管理人の話を、初めて私にしてくれた時の顔の輝きがいつもと違っていました。

「お母さん、私が管理する家、一緒に見て欲しいの」

こんな活き活きとした娘の表情を見たのは久しぶり。

(もしかしたらこの子に合った仕事かもしれない)

キラキラした笑顔に、私は小さな喜びを感じました。

依頼主はアメリカ在住の若いご夫婦

木のぬくもりを感じるインテリアに調和する、目覚まし時計と観葉植物のあるキッチン

民泊の管理を任されたのは、築いたばかりの新築住宅。

朝の光が差し込むリビングには、こんな可愛い目覚まし時計が置かれていました。

すぐそばに港があり、海の幸が豊富な街です。

晴れた日には富士山がくっきりと見え、交通の便もよく、まさに理想的な立地条件。

そんな家を購入されたのは、アメリカ在住の若いご夫婦。

ご主人はアメリカ人のITエンジニア、奥様は日本人で、小さなお子さんが一人いらっしゃるそうです。

冬に帰国された際、この地での民泊運営を思い立ち、この家を購入されたとのこと。

そして、ひょんなご縁から、娘の旦那さんに管理人としての依頼が舞い込みました。

思いがけないお話に、ありがたさと同時に少しの戸惑いも感じました。

でも何より、久しぶりに娘がいきいきと動き出す姿を見られたこと。

それが、私にとっては何よりもうれしい出来事でした。

何もかも一から

外観がスタイリッシュな新築三階建て住宅の入り口部分の写真

娘の案内で、その家を見に行きました。

玄関を開けた瞬間、新築の清々しい香り。

白と木目を基調にまとめられた、三階建ての美しい家です。

「私がここに住みたいくらいだわ」と娘が笑って言いました。

たしかに、家に文句はつけようがありません。

……でも、こんなに広い家を、本当に一人で管理できるのかしら。

正直、母としては不安になってしまいました。

しかも民泊の利用客は、海外から来る方が多いはず。

日本の古民家や体験型の滞在を希望するのでは?

そんな素人目線の疑問も頭をよぎります。

とはいえ、集客などの運営面は依頼主側が担当してくださるそうで、
娘に求められているのは「家の準備」。

家具や備品の手配、全室の写真撮影と送付。
与えられた期限は1ヵ月。

育児や家事の合間に、果たしてできるものだろうか……。
不安な思いを抱えたまま、家へと戻りました。

困った時には遠慮なく言ってね

元気を取り戻した笑顔を思わせる、明るく彩られた花束のイラスト

「お母さん、今日はありがとう。
一緒に話したり考えたりできて、すごくうれしかった」

帰り際、そう言ってくれた娘の表情が忘れられません。

あの娘が、半年前には「希死念慮が消えない」と苦しんでいたなんて……。

今、こうして前向きに話してくれるようになっただけで、胸がいっぱいになります。

「無理はしないでね。困ったときには、ちゃんと旦那さんと相談するのよ」
「お母さんの助けが必要なときは、遠慮なく言ってね」

私の家から娘の家までは往復150キロ。

頻繁に通うには、正直しんどい距離です。

でも、それでも――この子の力になれるなら。
この子の笑顔が少しでも長く続くなら。

私は、私にできる精一杯のお手伝いをしたいのです。

でも、何よりも大切にしているのは「娘のペースを尊重すること」。

私が先回りして動くのではなく、
娘の中から「助けてほしい」と声が上がったときに、
はじめて手を差し伸べたいと思っています。

娘にとって「話せる存在」であり続けること。
それが、私にできる一番の支えだと信じています。

だから私は、こちらから「手伝うよ」とは言いません。

静かに、でも準備だけは万端に。

体調を整えて、娘からの連絡を心静かに待とうと思っています。

「私は本当に、娘の力になれているのだろうか……」
そんな不安がよぎった日もありました。

でも今は、
「話を聞いてくれるお母さんがいる」と、娘に思ってもらえること。
それだけで、充分なのかもしれません。

今日の縁側便り

清水から臨む夏の富士山。

元気を取り戻した娘の笑顔に、逆に私のほうが元気をもらった――

そんな、夏の休日の出来事でした。

「希死念慮が消えない」と泣いていた頃の娘とは、まるで別人のよう。

その姿に、長い間胸につかえていたものが、少しずつほどけていくのを感じました。

この先、どんなことが起こるかは分かりません。

でも、私にとって一番大切なのは、ふたりの子どもたち。

母子家庭の時代から、三人で支え合い、苦楽をともにしてきました。

この子たちがいてくれるから、私はがんばれる。
心からそう思えるのです。

64歳になった今、仕事や家事には、もう全力投球はしません。

でも、子どものことだけは別。

私にできる限りの力を、これからも注いでいきたい。

いくつになっても、子どもは子どものまま。

その思いが胸にしみた、暑い夏の日の一コマでした。

もし、私のように、うつ病を抱えるお子さんを見守っている方がいらっしゃったら──
どうか焦らずに、一緒にゆっくり待ちましょうね。

縁側に置かれたハーブティーのグラスとピッチャー

いつも、お話を聞いてくださりありがとうございます。

心の中のお店を、ばぁばちゃんはいつも、そっと開けています。

ではまた、お茶を淹れてお待ちしています。

おかえりなさい。

私が勇気をもらった千聖の隠れ家メルマガあなたも、こっそりのぞいてみませんか?よかったら、訪ねてみてくださいね。

「ばぁばちゃんの台所カフェ」より

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